ぼくがぼくであること


ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)

ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)


これは、すごい。お話としても良くできているんだけれど、
それ以上に教育というか、社会の(大人の)病理というか、
エゴのようなもの(うまくそれを言い表す言葉が浮かばない)に、
うまくメスを入れているんだと思う。


主人公も面白い子で、痛快なんだけれど、
お母さんはそれを認めない。


で、家出して、事件にまきこまれたり、
あたらしい世界を発見したりしていくわけ。


話の後半、
この主人公の兄弟の長男は、優等生だったんだけれども、
大学で、友達の学生運動に巻き込まれて警察へ連行されてしまう。
学生運動ってところが、時代が出てると思うんだ。


次男も優等生。高校で、図書委員で、先生を手伝っていて、
「高校生に不適当な本を処分する」本の廃棄リストをみんなに配ったり、
リストの本を読んでいるところを見つかったりして、学校不信になる。


それで、お母さんは赤くなったり青くなったりして、大変。
で、警察から帰ってきた長男が、小言を言う母親へ言った言葉。

「だまって、ききなさい!おかあさんのように人を愛することもしないで、めさきのことだけで結婚し、ただ自分の気分のためにだけ、子どもを勉強へ追いやり、自分のめさきのちっぽけな安楽のためにだけ、子どもを大学へやり、一流会社へいれて、なにごともなくぶじにすごしたいというおとなたちが、この不正でくさりきった社会をつくったしまったんだよ。その責任はおかあさんにもある!」


なかなか、いいところ突いてると思う。